最高裁判所第三小法廷 昭和63年(行ツ)178号 判決
名古屋市名東区本郷三丁目一五九番地
上告人
近江松屋有限会社
右代表者代表取締役
早川佳宏
右訴訟代理人弁護士
二村満
名古屋市千種区振甫町三丁目三二番地
被上告人
千種税務署長
小林俊夫
右指定代理人
喜多剛久
右当事者間の名古屋高等裁判所昭和六三年(行コ)第五号法人税更正処分取消等請求事件について、同裁判所が昭和六三年八月三一日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人二村満の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 貞家克己 裁判官 伊藤正己 裁判官 安岡満彦 裁判官 坂上壽夫)
(昭和六三年(行ツ)第一七八号 上告人 近江松屋有限会社)
上告代理人二村満の上告理由
原判決は判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違背がある。
一、本件控訴棄却の理由は、行政事件訴訟法一四条一項、四項に定める出訴期間を徒過した不適法なものであること、及びその徒過と看做す始期たる初日とは、抽象的な知り得べかりし日を意味するものではなく、裁決の存在を現実に知つた日を指すと解されている。
二、本件裁決書謄本を受領したフロント係は、そもそも何らかの権限を有するといつた性質の職務を負つているものではなく、所謂、肉体労働そのもので、外部からの意思受領の能力を問題とする余地のない労務内容である。ただ単に送達書類があれば保管し、実質上の総務担当責任者である安永郁夫に渡す建前となつている。ところで、上告人会社の登記簿上の代表取締役は、名目上のもので、実際は名前を借りているに過ぎず、その実質上の代表取締役乃至責任者、オーナーは、取締役として名があがつている安永郁夫であるが、右安永が当時、出張中で不在であつたため、同人が当該書類を受取つたのは、その送達日の四日後で、そのときはじめて、裁決の存在を知つたのである。
三、それでは、意思受領能力を有しない従業員しかいない所を何故、本店所在地にしているかとの疑問が生じようがそれは、次の理由によるものである。上告人の実質上の責任者たる安永郁夫は上告会社のほか旅館業、レストラン、医薬品の販売等を業とする太洋物産株式会社のオーナーでもあり、同会社は本店を名古屋市東区葵一丁目二五番一号とし、同所に事務所を持ち、全てを統括している。
一方、上告人会社は、所謂、ラブホテルであり、ラブホテル関係のトラブル等により右本店たる事務所へ、不特定多数の者が訪れてくるのは、イメージダウンも甚だしく、営業上、不都合があつても上告人会社の本店を右東区葵の本拠に置くことは出来ないのである。
四、このような状況下、送達書類が現実の受領日より四日後に安永の了知し得べき状態におかれ、この日こそ、裁決の存在を現実に知つた日なのである。その日から起算すれば、行政事件訴訟法一四条一項、四項に定める出訴期間を徒過したことにならず適法な訴であり、明らかに法令の解釈を誤つた違背があり速やかに破棄されなければならない。
以上